2重スリット実験(6) コペンハーゲン解釈

科学者たちは、この実験Cをどのように解釈したのだろう?

もちろん、この実験Cについて、科学の世界における「標準的な解釈」というのは存在する。それは「コペンハーゲン解釈」とも呼ばれている。
(コペンハーゲン大学の科学者(ボーアら)が提唱した解釈だから、そう呼ばれる)

一体、彼らは、この実験Cをどのように解釈したのだろう?

そもそも。
実験Cは大きな「矛盾」をはらんでいる。

電子が「波」であっても「矛盾」するし、電子が「粒子」であっても「矛盾」する。

「矛盾」があったときはどうするか?

そんなときは、「矛盾」を素直に受け入れ、実験結果を素直にそのまま受け入れてやればいい。そうしてできた新しい理論こそが、量子力学である。

では、もう一度、実験Cを見直してみよう。
ひとつひとつの実験事実を 素直に解釈してみるのだ。

事実1)飛ばされた電子は、スクリーン上には、「点」として観測された。
→この事実より、電子は「位置」を持った「粒子のような存在」であるといえる。

事実2)干渉縞の形は、スリットAとスリットBの位置で決定される。
→干渉縞とは、スリットAとスリットBを同時に通り抜けた「波」が干渉しあって、作り出すシマ模様である。ゆえに、電子は、2つのスリットを同時に通り抜けられるような存在でなくてはならない。したがって、電子は、空間的な広がりを持ち、2つのスリットを同時に通り抜けられるような「波のような存在」であるといえる。


さてさて。事実から、それぞれ素直な解釈がでてきた。
事実1では「電子は粒子」であり、事実2では「電子は波」となってしまった。
ということは、やはり、電子とは「粒子のような波のような存在」なのだろうか?

ところで、ここでもうひとつ気になる事実がある。

事実3)電子1個を飛ばしたときに、スクリーン上のどこで観測されるかという確率は、干渉縞の形にしたがう。

結局、この事実3を見ればわかるように、干渉縞として見出される「波」とは、あくまで「粒子がここで見つかるかもしれないよ〜」という「確率の波」であり、いわゆる「海の波」などの「エネルギーを伝える波」とは決定的に違うということを忘れてはならない。

言い換えるなら「電子が存在する場所の確率」が存在し、それが波のように漂っていると言ってもいい。

ともかく、こうした事実をふまえて素直に解釈すると、実験Cはこのように説明できる。

電子は、スクリーンに到達して観測される前は「波」である。だから、波である電子は、2つのスリットを同時に通り抜けることができて、干渉模様を作ることができる。ただし、この「波」の正体は「粒子がどこで観測されるかの確率の波」である。そして、電子がスクリーンに到達して、観測されると、電子は「粒子」になる。

これを簡単に言うと、電子は、「観測される前は波であり、観測されると粒子になる」ということを意味する。

電子をこのように考えて説明するのが、「コペンハーゲン解釈」であり、ようするには「だるまさんが転んだ解釈」だと言ってもいい。

つまり、電子を観測していないとき、(だぁるまさんが〜〜〜
電子とは、
自分はここにいるかもしれないという確率的な存在で、波のような存在
である。



そして、観測されると、(ころんだ!!)、
突然、波は消えて、「粒子」に変身するということだ。



この「観測する前は波だけど!観測されると粒子に大変身よ〜!」理論を使えば、2重スリット実験は、問題なく説明できてしまう。
ようは、
「ねぇ、なんで、電子は粒子なのに、2つのスリットを同時に通れるの?」
「観測される前は、波だからさ」
「でも、2つのスリットにセンサを置いたら、一方のセンサしか反応しないよ?」
「観測されると1個の粒子になるからのさ」
ということだ。

もしかしたら、騙されているように思うかもしれない。
「観測される前は波だけど、観測すると粒子になっちゃうって、ソレ本当なの?そんな馬鹿げたことありえるの?」と思うかもしれない。

そのように疑問に思うことは、当然の権利だが、

「電子って観測する前は波だけど、観測すると粒子になるんだよ〜」
と解釈すれば、実験Cは問題なく矛盾なく説明できるという点だけは理解してほしい。

だから、「おまえ、電子が波から粒子になるとこ見たんかい!?本当に正しいのかよ!」と、胸倉を捕まえて、科学に詰め寄っても、「しらねーよ。でも、こう解釈すれば、辻褄が合うんだからいいじゃねぇか!」と言うだけである。

そもそも、科学の役割とは、「矛盾なく説明でき、実験結果を予測できる理論を作ること」である。
だから、ぶっちゃけて言えば、「観測する前は波!観測されると粒子に大変身〜!」ということが、「本当に起きているかどうか」なんてことは、科学にとって、どうでもいいことなのだ。

ともかく。
量子力学の標準的な解釈(コペンハーゲン解釈)としては、以下の2つにまとめられる。

・電子(物質)は、観測される前は波のようにな存在であるが、観測されると粒子になる。
・観測される前の波とは、粒子がどこで観測されるかという確率を表している。


ちなみに、この電子の波が、「どの時刻でどんな形になっているか」ということは、「シュレディンガーさんが作った波動方程式」で計算することができ、この方程式(ある時刻の「波の形」を示す数式)から、「ある時刻で、電子がどこで観測される可能性があるか?」を知ることができる。

ようするに、量子力学とは、「その粒子がどこで見つかるか?」を波の方程式を使って確率的に述べる物理学なのである。

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